繰り返し発生する地震に対し模擬地震動・時刻歴地震応答解析

模擬地震動サポート会員

b star 模擬地震動

はじめに
f
 建築物の耐震設計を行うために、時刻歴地震応答解析と呼ばれる動的解析
が用いられています。この時刻歴地震応答解析とは、建築物を質量・バネ・減衰でモデル化した上で地表面に時間と共に変化する地震加速度を与え、建築物各階の応答加速度・速度・変位を計算することであり、これらの応答結果から建築物の耐震性を判断しています。従来、応答解析に用いられる地震動波形は、表1に示すエルセントロ・タフト・八戸・神戸等で観測された強震波形を用いることが中心でした。
0模擬地震動
 しかし、観測された強震波形を用いる方法は、建築物の立地条件(地震を起こす断層からの距離や地盤等)が反映されない欠点があります。従って近年は、建築物の立地条件適した設計用地震動を人工的にコンピューター上で作成した模擬地震動が応答解析に用いられるようになりました。
h
地震波作成(フーリエ逆変換)
f
 地震波に限らず、波形はそれぞれの周期の振幅と位相が判ればフーリエ逆変換によって時刻歴波形を作り出すことが出来ます。ここで、フーリエ解析とは、フランスの数学・物理学者であるフーリエ(Four ier:1768~1830)
が確立した、すべての波形(地震波・音波など)は、三角関数(sin cos)の和として求めることができるという理論です。
1模擬地震動
 フーリエ解析により、この地震波を規則的な波に分解した時の係数(a b c)の値を求める事が出来ます。マルで表した場所が大きな成分を含む範囲であり、成分が卓越している0.2sec~0.6secの固有周期をもつ、およそ3階から5階、6階建ての建物の周期特性が一致する(共振する)事から大きな影響があると予想されます。実際、兵庫県南部地震における被害報告書をみても、3階から5階、6階建ての建物の被害は多くこの解析結果と一致しています。
2模擬地震動
h
地震波の特性1
f
 地震波は地盤条件によって大きく変化します。地盤は、下図に示すように、地震基盤・工学的基盤・表層地盤に区分されてます。
3模擬地震動
となります。実際の加速度応答スペクトルは先のようななめらかな曲線になるわけではなく、もっとギザギザになりますが、これはその外郭線をなぞったものだと考えてください。また、応答スペクトルは通常「減衰定数」というものをパラメータにし、「減衰定数がXXの時の応答スペクトル」というように表現されます。地震動の周期と建物の周期が近付くと、加速度応答が大きくなります。ということは、加速度応答スペクトル上で応答値が大きくなっている部分は、地震波の中に「そのあたりの周期の成分が多く含まれている」ことを教えてくれます。(例えば上の図でいえば、「この地震波には周期0.5から0.8秒程度の成分が含まれている」ということになります。)
 さらに、『どのような周期成分が多く含まれているか』ということは、『どれほど複雑に見える波でも、それを一定の周期・振幅・位相をもった正弦波(サインカーブ)と余弦波(コサインカーブ)に分解することができる』という原理があるからです。この「波をときほぐす」手法「フーリエ解析」その結果をグラフにあらわしたものを「フーリエスペクトル」と呼ぶことは既に説明しました。ですから、「この前ドコソコで起きた地震はどのような性状のものだったのか」ということを知りたいのなら、ドコソコで記録された地震波の応答スペクトルを見ればよい、ということになります。
 さらに、同じ地震を受けても埋立地のような『軟らかい地盤』上に建設された家屋は揺れが大きく、被害もまた大きくなる、ということはよく知られています。このことは、表層地盤の性状によって『違った地震になる』、つまり『応答スペクトルが違ってくる』ことを示唆していることなのです。『ではどのように違ってくるのか』といいますと、地盤がやをらかくなるほど応答スペクトルが『右側にシフトする』、つまり『長周期成分が多くあらわれてくる』のです。すなわち『ドコソコで記録された地震波の応答スペクトルを見ればその地震の性状が分かる』ことは、『応答スペクトルを見ればドコソコの表層地盤の性状が分かる』ということに他なりません。その理由としては、地表面での応答スペクトルとは表層地盤の応答をあらわしたものだからです。
4模擬地震動
 この、表層地盤による増幅のされかたについては、『平12建告第1457号第7』で規定されています。表層地盤に含まれる各地層の層厚・せん断波速度・密度などのデータを基にこれを等価な一層地盤に置換え、地盤の非線形性を考慮しながら収束計算によって増幅率を求める方法です。
h
地震波の特性2
f
 地震波のもう一つのパラメータは位相特性です。再び、既存記録地震波Eicentro_NS波を基に説明します。下図は、位相特性を無視し各周期成分のみ考慮して地震波を再現した例です。
5模擬地震動
h
模擬地震波の作成
f
 以上の理論的背景から、現在模擬地震動の作成基準は(建築物の立地条件に適した設計用地震動)以下2種類となっています。

(1)告示第4号イに定められた解放工学基盤における加速度応答スペクトルをもち、建設地表層地盤による増幅を適切に考慮して作成した地震波(以下「告示波」という。)を設計用入力地震動とする。この場合、告示第4号イに定められた継続時間等の事項を満たし、位相分布を適切に考慮して作成した3派以上を用いること。

(2)告示第4号イ但し書により、建設地周辺における活断層分布、断層破壊モデル、過去の地震活動、地盤構造等に基づいて、建設地における模擬地震動(以下「サイト波」という。)を適切に設定した場合は、前項の告示波に代えて極めてまれに発生する地震動に相当する設計用入力地震動として用いることができる。
 
 上記(1)により告示波を用いる場合においても、告示第4号イ但し書に記された地震動の建築物への入力効果を適切に考慮する方法として、当分の間、次の地震波も設計用入力地震動として併用する。即ち、過去における代表的な観測地震波のうち、建設地及び建築物の特性を考慮して適切に選択した3波以上について、その最大速度振幅を25㎝/s、50cm/sとして作成した地震波を、それぞれ稀に発生する地震動、極めて稀に発生する地震動とする。なお、上記の最大速度振幅の値は令第88第1項に定められたZを乗じた値とすることができる。
 ここで、(2)「サイト波」とは、震源の断層を小領域に分割して、小領域の破壊によって生じる砲絡波形を重ね合わせることによって断層全体の破壊から生じるスペクトルを求めています。入力データとして地震パラメータが必要となります。

 断層パラメータを下図に示します。
6模擬地震動
 また、ここでの告示とは、『H12建告1461』であり、イ建築物に水平方向に作用する地震動は、次に定めるところによること。ただし、敷地の周辺における断層、震源からの距離その他地震動に対する影響及び建築物への効果を適切に考慮して定める場合においては、この限りでない。

1)解放工学的基盤(表層地盤による影響を受けないものとした工学的基盤(地下深水にあって十分な層厚と剛性を有し、せん断波速度が約400m毎秒以上の地盤をいう。))における加速度応答スペクトル(地震時に建築物に生ずる加速度の周期ごとの特性を表す曲線をいい、減衰定数5%に対するものとする。)を次の表に定める数値に適合するものとし、表層地盤による増幅を適切に考慮すること。
7模擬地震動
2)開始から終了までの継続時間を60秒以上とすること。
3)適切な時間の感覚で地震動の数値(加速度・速度もしくは変位又はこれらの組み合わせ)が明らかにされていること。
4)建築物が地震動に対して構造耐力上安全であることを検証する為に必要な個数以上であること。
と定義されています。

 B_DYNA・EQP2 での模擬地震波の作成では、(1)『告示波』となっています。工学基盤の基準スペクトルは、『H12 建告1461』の標準スペクトルとし、地域係数を考慮します。また、表層地盤のP-S検層値(地盤のせん断波速度Vs及び地盤の種別)から、表層地盤の増幅特性を算定して表層地盤における加速度応答スペクトルを定義します。また、位相特性については乱数発生と既往観測波の位相による2種類が選択できます。乱数発生の場合、砲絡関数Jennine型で規定します。
 
8模擬地震動
h

トップ
nextエネルギー法サポート会員 

powered by HAIK 7.3.8
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional